桜空あかねの裏事情

闇市 某所



――どうして。
――確かに思ったはずなのに。
――帰りたいって
――思ったはずなのに。
――どうしてこうなった。


「コラー!ニゲルナー!!」

「無理!絶対無理!」


背後から迫り来る怒気を帯びた少女から、あかねは逃げる為、必死に走っていた。


――本当に何で!?
――黒貂と一緒に昶達のとこへ
――行くはずだったのに!
――何で黒貂と石だけが
――消えてんの!?
――おかしくない!?


黒貂の本心を聞いて、覚悟を決めたあかねは、矢一の異能石を使った。
そこまでは計画通りだったのだが、何故かあかねだけ取り残され今に至る。
そんな現状に混乱と困惑を抱いたまま、後ろを振り返る事なく、あかねはただ走る。


――私、何か間違えてたの!?
――それとも
――あれ一人用だったとか!?
――いや、そんなこと
――全く聞いてないし!


「マテー!」

「こ…“来ないで!”」

「ギャ!」


追い付かれそうになって、咄嗟に言霊を使って、少女を転ばせる。
その隙に角を曲がって、更に曲がって身を潜める。


「はぁ…はぁ……」


――さっきから
――昶の能力で凌いでるけど。
――始めの時より
――効かなくなってる気がする。
――それに体もなんとなく重い。
――というか
――出口に向かった方がいいの?
――それとも
――矢一と合流した方がいいの?
――分かんない!
――どうしたらいいの!?


まとまらない思考に悩みつつも、息だけは整える。


「……ふぅ…」


一息零して、周囲を見渡すと近くに人の気配はしない。
だが喧騒は先程より耳に入ってきて、混乱する頭を徐々に覚ましていく。


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