桜空あかねの裏事情

――こんな事になるなんて
――思ってもなかった。
――誰もいない。
――怖い……怖いよ……。


あかねは自身を力強く抱き締める。
黒貂が誉めていた衣装も、今では破れたり汚れていたりと、見る影もない。


――……だけど。
――ここにいても仕方ない事くらい
――分かってる。
――………………。
――……出口へ行こう。


息を潜めて、周囲を見渡す。
やはり人の気配はなく、あかねは意を決して駆け出す。


「ニガサナイヨーダッ!」

「!」


突当たりまで走り出そうとすると、行く手を阻むように再び少女が現れ、あかねは足を止める。


「……しつこいよ」

「ソッチガニゲルカラジャン!アタシダッテツカレルヨー」

「だったら諦めて」

「ソーユーワケニハ、イカナイモン!」

「………」


頬を膨らまして一歩ずつ迫る少女に、あかねもまた警戒しながら、一歩後退る。


「何をしているのです?」


背後から聞こえた声に、思わず肩が跳ねる。
勢い良く振り返れば、蘇芳色を基調とした洋装に、身を包んだ女の姿があった。
きつめの美人と言ったところか。
腰まである薄茶の髪を揺らしながら、こちらの様子を伺っている。


「アー!チョウドヨカッタ〜♪ソノコツカマエテー!」

「!」


――知り合い?
――まさかこの人も
――アヴィド…!?


「いきなりなんですの?」


焦燥に駆られつつあるあかねの心情など知らずに、女は怪訝な顔つきで少女に尋ねた。


「コノコサッキカラズット、ニゲルノ!アタシダケジャツカマエラレナイ!」

「遊び相手なら他で探しなさいな………あら?この子、アロガンテの」


少女の言い分に、呆れていた女。
だがあかねの顔を見た途端、心辺りがあるのか目を丸くしてそう呟いた。


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