桜空あかねの裏事情
「それは…」
あかねは答える事が出来ず、沈黙する。
「まぁ僕から見ても、君はよく頑張ったよ。ただオルディネのリーデルには及ばなかっただけでさ」
陸人はさも当然のように言い放つ。
「この際だから言っちゃうけどさー、オルディネの頂点ってのは、そこら辺のチームの頂点とは違うんだよ」
「…どういう事ですか?」
「他のチームの頂点ってのはね、そのチームの中で一番強いヤツがなるもんなの。まさに弱肉強食ってやつ。でもオルディネの頂点は違う。力だけじゃない、人格や品格、あらゆる面において優れてる人がなるんだ」
リーデルはチームの象徴。
結祈に連れ立って館にやって来て、ジョエルによってリーデルと宣言されたあの日。
訳が分からなかったあかねに、アーネストが丁寧に教えてくれたのを思い出す。
「自分達に、希望を見せて導いてくれる。この人の為なら、全てを捧げられる。リーデルってのは、そんな風に思える尊い人が、なるもんなんだよ」
「希望……全てを、捧げる…」
「大袈裟だと思う?そう思うならやっぱり、キミはリーデルに相応しくないよ」
躊躇なく放たれた言葉。
突き刺さるような感覚が走る。
「キミは一般社会に馴染んで、幸せに生きてきただろうから知らないと思うけど、異能者ってのは、ただそれだけで差別される。何かしたってわけでもないのに。異能者と分かった途端、手のひらを返すんだ」
どこか悔しげに吐き捨てる陸人。
あかねには後姿しか見えず、表情は分からなかったが、何故だか自分がそうだったと言っているように聞こえた。
「それでもボク達は、普通の人間と共存しなくちゃ生きてけない。互いに反目し合ってたって、拒絶したって何も変わりはしないからね」
陸人はそう言い切って振り返る。
その表情は険しく、恨めしげにも見え、あかねは少しだけ怯んだ。
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