桜空あかねの裏事情


「これで全員揃ったな」


話に一区切りついたところで、ジョエルの低い声が響く。
あかねを含めたこの場にいる全員の視線を、一身に受けながらも、平然とジョエルは口を開いた。


「早速、本題に入らせてもらうが……お嬢さん。体調の方は問題ないか?」

「え?……あ、うん。大丈夫」


唐突な気遣いに、あかねは驚く。
少し離れて座っているため、サングラス越しの彼の表情は見えない。
だが普段のように、皮肉を浴びせられることもなかった為、あかねは間を置きながらも、素直に答えた。


「ならばいい。しかし無理はしない事だ。今が最も大事な時期であるのは、君も分かっているだろう」

「…うん。そうだね」


期限まであと僅か。
十分に理解していても、その事実は、あかねに重くのしかかる。


「本題と言うのは、明日行われるチーム戦のことだ」

「チーム戦…」


思考を巡らせながらも、あかねはジョエルの言葉に反応する。
少しずつ記憶を辿ると、以前ジョエルから授けられた書物の中に、ランキング制が導入された近年のチームの格付けを決める手段として、書かれていたのを思い出した。


「それって確か、順位を決めるんだよね?」

「主にはな。オルディネは人員不足を理由に、近年棄権し続けていたが、今回は解散の危険性がある為、承諾した」

「そうなんだ」

「内容は当日、会場で告知される。純粋な力試しや、能力の見せ合いなど真剣勝負がある一方で、宝探しなど実に馬鹿げたお遊びもある」

「…つまり適当なのね」


感想を述べれば、アーネストと結祈が苦笑する。


「昶達には先の会議で既に告知してあるが、対戦相手はランキング十位のチーム・ソンブルだ。多少の癖はあるが、これといった強者はいない」

「……へぇ」


相槌を打つものの、何を思ったのかあかねは顔を強張らせる。
それに気付いたアーネストは、あかねに優しく微笑み声を掛けた。

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