桜空あかねの裏事情
「さっき紅晶が、用事があるって言ってたね」
「ああ。先日の一件で、アロガンテが解散した話は覚えているな?」
「うん」
オルディネに帰還した翌日。
先日の誘拐の件と、アロガンテが異能者の売買に関与している事が露呈した。
それにより、協会によって屋敷を調査され、数ヶ月前に行方不明になっていた異能者を数人、保護したという。
しかしそれが決定的な証拠となり、アロガンテは協会により厳罰処分を言い渡され、事実上の解散となった。
「本来なら我々と関係はないところだが、協会から紅晶に召集が掛かった。恐らく事情聴取だろう」
「事情…聴取…」
あかねの顔色は曇る。
紅晶は確かに所属者で事情を多少なりとも知っていたが、被害者でもある。
それでも、何か咎められたりするのだろうか。
「案ずることはない。紅晶もまた被害者だからな。君が思うようなことはない」
「そっか……良かった」
あかねは心底、安堵する。
「まぁ召集と言っても強制ではなかったからな。断っても構わないと進言したが、彼女は快諾した。恐らく、気掛かりなことでもあるのだろう」
「………」
気掛かり。
その言葉にあかねは、矢一のことを思い浮かべる。
アヴィドの連中に見つかり別れたのを最後に、矢一は消息を絶っていた。
対峙していた銀髪の青年の発言から察するに、生きてはいるのだろうが、はっきりとした詳細は掴めておらず、あかねも懸念していた。
「そういうことだ。本来なら紅晶だけで十分だが、協会側に余計な詮索をされても困るからな。面倒な事この上ないが、仕方ない」
口では悪態をつくジョエルだが、声色はどこか楽しげで、いつものように挑発的な笑みを浮かべる。
「ではな、お嬢さん。他に何か気になる事があれば、そこにいる結祈やアーネストに聞きたまえ」
半ば一方的に話し終わると、ジョエルはついに部屋を出た。
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