桜空あかねの裏事情

「はーい。お待たせ」


ジョエルが去って、ほぼ入れ替わりで湊志がやって来て、注文された飲み物やつまみを順に置いていく。


「はい、あかねちゃんのミルクティー。あ、ケーキはサービスね」

「わぁ!ありがとうございます!」

「いえいえ。でこっちが結祈くんのオリジナルティーね」

「ありがとうございます」

「それにしても、ジョエル達はもう帰っちゃったみたいだね」

「ええ。既に予定があるようでして」

「そうなのかい。ところで、一緒にいた女性は誰だい?物凄い美人だったよね。バイトの子も、お客も見惚れてたよ。もしかして、ジョエルの愛人?」


興味津々に尋ねる湊志。
あかねと結祈は顔を見合わせ苦笑するが、アーネストは愉しげに笑った。


「ははっ。それなら面白いのだけれどね。残念ながら、彼女はジョエルの好みじゃないよ」

「ってことは、君の新しい恋人?」

「それも違うよ。口説く予定はあるけどね。彼女はつい最近、オルディネに所属した子さ」

「あ!ってことは、幽閉されてたっていう噂の絶世の美女だね。あかねちゃんが、アロガンテから連れてきたっていう」


合点がいったように納得した湊志は、楽しげに笑みを浮かべた。


「流石だね、あかねちゃん。絶世の美女まで虜にしちゃうなんて」

「と、虜って……大袈裟ですよ」

「そうかな?私から見ても、あかね嬢は魅力的な娘だよ」

「アーネストさんまで……ひょっとしてからかってます?」


湊志に便乗するアーネストを、あかねは軽く諫める。


「ふふ。からかっているつもりは、ないのだけれどね。結祈だってそう思うだろう?」


話を降られ、結祈は一瞬困った表情を浮かべるものの、思いの外すんなりと答えた。


「そうですね。ご学友の方々からも慕われていると聞きますし。何よりあかね様は、素直で愛らしく、優しい方かと思います」


慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら語る結祈。
その様子を見て、湊志は途端に目を丸くする。


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