桜空あかねの裏事情
「確かに他人から見たら、そうかも知れないね」
呟いた疑問に、アーネストがさらりと答える。
「それよりあかね嬢。この後の予定は?」
「ないですよ。強いて言うなら、テスト勉強ぐらいで……どうかしました?」
「もし良ければだけど、今日の夕食はヴィオレットにしないかい?」
「それはいいね!」
あかねに向けた提案のはずが、アーネストの言葉に誰よりも反応したのは、笑っていたはずの湊志だった。
「今日は団体の予定が入ってたんだけど、キャンセルされちゃってさ。余分に仕入れた食材をどうするか、決めかねてたんだ」
「おや、そうだったのかい。なら駿達も呼ぼう。どうかな、あかね嬢?」
「いいですよ。私も昶と朔姫呼びますね」
「ふふっ。何だか楽しくなりそうだね。じゃあホールに伝えてくるよ」
湊志は笑みを浮かべながら、嬉しそうに颯爽と部屋から出て行った。
同時にあかねは携帯を取り出し、新規メールを作成し、慣れた手付きで、文字を入力していく。
「へぇ……今の子は、こんなに早く打つんだね」
あかねの手付きを観察しながら、アーネストが呟く。
「そうでもないですよ?…ってその言い方、何かおじさんくさいですよ」
「おじさんか……強ち間違ってはいないかもね。こう見えて、私も若くないから」
「そうなんですか?」
「割とね」
「割と……ズバリ!いくつですか?」
「いくつだと思う?」
質問を質問で返され、あかねは文字を打つ手を止め、アーネストの顔を見つめる。
端正な顔立ち。
金髪にも似た栗毛色の髪。
アメジストのような紫の瞳。
初対面の時も思ったが、優男もとい容姿端麗とはまさにこういうことだろう。
結祈達の言う女癖の悪さを除けば、おとぎ話に出て来る王子と言っても過言ではないと、客観的にあかねはそう思った。
しかしそれと同時に王子にしては、妙な落ち着きと得体の知れない凄みがある。
.