桜空あかねの裏事情
「うーん……三十路ちょっと過ぎ?」
思考に思考を重ねた末、あかねはそう答えた。
するとアーネストは、含み笑いを浮かべて口を開いた。
「じゃあそれにしよう」
「……答えになってないですよ」
密かに期待していたあかねは、肩透かしを喰らったように呆れた。
「ふふ。期待させちゃったかな。あかね嬢には悪いけど、年齢は秘密にしてるんだ」
「なんですかそれ。女子ですか」
あかねはやや冷ややかな悪態をつく。
その反応を楽しんでいるかのように、アーネストは更に笑みを浮かべる。
「どうしても知りたいと言うなら、私の恋人になってみてはどうかな?」
「恋人ですか?うーん……それは難しいですね」
「どうしてだい?」
詰め寄りながら、アーネストは尋ねる。
互いの鼻先が触れそうなほどの至近距離。
急に狭まった距離に、あかねは不思議そうに目を瞬かせる。
そして澄んだ青い瞳でアーネストを捉えながら、平然と答え始めた。
「なんていうか……アーネストさんは恋人っていうより、頼れるお兄さんって感じなんですよね」
「お兄さん?」
「はい!うちの兄貴達とは、ちょい違いますが。だから恋人っていうのは正直微妙というか」
「微妙かどうかは、付き合ってみなければ分からないものだよ」
「そうなんですか?でも私、アーネストさんタイプじゃないし」
さり気なく放たれた言葉に、アーネストは思わず絶句する。
だがあかねは気付くことなく、更に話を進める。
「もちろんアーネストさんは、素敵な人だと思いますよ。頭も良いし美人で、他人を気遣える優しい人ですし。女の人にモテるのも分かりますけどね」
あかねは再び携帯を取り、文を打ち込んでいく。
話しているうちに打ち終わると、出来上がった文章を見て、誤字がないことを確認すると、あかねは送信ボタンを押した。
「送信っと。あ、葛城さん達にも送っておきますか?」
「……」
「アーネストさん?」
「……ああ。そうだね。良ければそうしてくれるかな」
「はーい」
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