桜空あかねの裏事情

養成所




「せんせー!ひーくんがボールとったぁ!」

「光。返してやれ」

「あー!ちょっと何してんのよ!バカ!」

「バカはお前だ!ゴリラ女!」

「そこ!静かにしろ」

「先生!ユノちゃんがいません!」

「アイツはサボりだ。千尋が探しに行ってる」

「ははっ!駿ちゃん大変だねっ♪」

「そう思うなら翼、お前からもアイツに言ってくれ」

「えー♪」


養成所のとある教室。
通常の授業が終わり、今は週に二度ある特別授業の最中であった。
ほとんどの生徒が順調に作業をしている傍ら、極僅かだが騒いだり、作業を放棄したり、中には教室にすらいないという、自由奔放な生徒達の存在に、駿は心なしか溜め息を吐いた。


「……なんていうか」

「大変だねー……」


偶然にも予定がなく、駿に誘われ養成所にやって来たギネヴィアと泰牙は、悩ましげな彼とその光景を遠巻きに見て呟いた。


「彼の事だから、しっかり面倒見てるもんだと思ったけど……なんていうか、あっちでもこっちでも、こき使われてるって感じがするね」

「そうねぇ。ただでさえ生真面目だし、ちょっと天然だから、巧いように使われちゃうのよ」


つい二週間ほど前に、オルディネに所属したばかりの駿。
その生真面目な性格が故に、ジョエルを始めとする数人に言いくるめられ、雑用(本人は任務だと思っている)を任せられることも少なくなく、ジョエルから当て付けと言わんばかりに、仕事を与えられるギネヴィアから見ても、苦労が絶えないと思えた。
しかしながら、駿は何だかんだ与えられた仕事をこなし、未成年で異能者として不十分なあかね達の世話を焼いている。
何事にも取り組む彼の姿勢は、感心と同時に憐れみの念を抱くが、それが彼の長所なのであろう。
そんな愚直にも他人と向き合える駿だからこそ、生徒達もまた信頼し、慕っているのだと感じた。
とはいえ、オルディネにはここぞとばかりに、利用している者がいるのも否めない。

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