桜空あかねの裏事情
プラティア 第四区某所
「あーつっかれたー」
すっかり暗くなり、街灯が付き始めたプラティアの街中で、陸人は鬱憤を晴らすように吐き出した。
「聴取ってこんなに長いもんだっけ?ホント面倒くさい」
「申し訳ありません。私が手間取り過ぎてしまって」
「別に君は悪くないよー。ボクが言ってるのは、クソ協会のバカ共のことさ」
苦笑しながら謝る紅晶に、陸人は笑いかける。
「むしろ紅晶ちゃんの方が大変だったでしょー」
「いえ。私はただ、聞かれたことにお答えてしていただけですから。それに…」
紅晶は先を歩くジョエルをちらりと見る。
「…私より、終始傍にいて下さったジョエル様の方が苦労されていたかと」
協会からの聴取を受けていた間、紅晶が未成年であるということを理由に、ジョエルは保護者という名目で彼女の隣に控えていた。
恐らく協会側から余計な事を聞かれないように、牽制の役割を買って出たのだろう。
しかし彼は、特に口を出すこともなく終始無言でいた為、ジョエルには退屈この上なかっただろうと紅晶は感じていた。
「そんなことないでしょ。むしろ楽しんでたと思うよ」
「そうでしょうか?」
「見た目通り、性根腐ってるからね………あ!ジョエルー!」
何を思ったのか、陸人は会話の途中でジョエルを呼び止める。
「この後ヴィオレット行くんだよね?ボクさ、ちょっと三区の方に行ってくるー。ちゃんと紅晶ちゃんを連れてくんだよー」
陸人は言いたいことだけ言うと、振り返ることなく横の道へと走って行った。
陸人がその場から去ったことにより、辺りが急に静まり返ったのを紅晶はひしひしと感じ取れ、心なしか肌寒さを覚えた。
「………行くぞ」
「はい」
再び歩き出すジョエルに、紅晶は少しずつ距離を埋めながら後を追う。
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