わたしの魔法使い
泣いたら負けなのに。

そう思っても、涙は止まらない。

話さなきゃって思うけど、出てくるのは嗚咽ばかり。

そんな私の頭に、優しく手が載せられる。


「待ってるから…ゆっくりでいいから。」


優しい言葉と温かい手が、私の涙腺を緩くする。


溢れる涙は頬を伝い、ぎゅっと握りしめた手に落ちる。


涙って温かいんだ……

こんなに温かいって、知らなかった。


「わ……私…ね、逃げてきたの……父親から……」




子供の頃から、お話を書くのが好きだった。

母親も作家で、いつも原稿書いてる隣で、私も書いてた。


いつも眼鏡をかけて、すごく真剣な顔をして書いてる母が大好きだった。

でも、私が小学校に上がる頃、“もう書けない”って遺書を残して自殺、しちゃった。

「大好きだったのに、どこかに行っちゃった」って、すごくショックだった。

母の隣で書くのが好きだったから、いなくなってからは一切書かなくなった。

書くことで自己表現してたんだろうね。

私、どんどんおかしくなっていって、笑うことも、泣くこともできない、表情のない子供になっちゃった。

表情のない子供って、不気味でしょ?

今度は学校で虐められた。

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