わたしの魔法使い
渋々ベッドから降りると、テーブルには朝食が用意されていた。

ご飯と味噌汁、それに

「焼き鮭!」

私の理想の朝御飯!

こんな普通な朝御飯、久しぶりだ。

私は嬉しくなって、またニコニコとしてしまう。


「早く顔洗っておいでよ。よだれのあと、ついてるよ」


私から無理矢理引き剥がした布団を抱え、颯太さんが意地悪そうに笑う。

「う、うそっ!」

洗面所に飛び込み、鏡を覗き込むと、寝癖だらけの顔が映っていた。

「よだれのあとなんてないじゃん!」

少し乱暴に顔を洗って戻ると、颯太さんはまだベランダにいた。

気持ち良さそうに伸ばした腕の間で茶色い髪が風に揺れていて、そこだけ別世界みたい。

強いて言えば、お城のベランダで、王子さまが下界を見下ろしてる感じ?

まあ、実際には洗濯物がはためいているんだけど。

綺麗な人っていいよねーなんて思ってみていると、王子さま…じゃない、颯太さんが振り返った。


やっぱり振り返っても、王子さまみたい……


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