わたしの魔法使い
部屋がシンプルだと、掃除が楽だ。

朱里ちゃんの部屋は本当にシンプル。

あるものって言ったらベッドとテーブル、それとノートパソコンぐらい。

そんなに広い部屋ではないけど、家具が少ないから広く感じる。



そういえば、室長が言ってたっけ。「書けなくなった」って。

でも、パソコンがあるってことは、書きたいって気持ちはあるんだろう。

また読みたい。朱里ちゃん…千雪の話を。


千雪の話はいつも恋の話で、僕が知らないことを教えてくれる。

恋の楽しさも、苦しさも、千雪の小説が教えてくれた。

読みたいな~。千雪の小説…



でもこの部屋に本が1冊もない。

千雪の本も、雑誌ひとつない。

ないとなると、読みたくなるんだよね。

携帯で読んでもいいんだけど、やっぱり物足りなくて。

あとで買い物行ったついでに本屋に寄ろうかな?

でも、朱里ちゃん、嫌がるかな?


読みたい本のタイトルをあれこれ考えながら床を拭いていたら、あっという間に終わってしまった。

とりあえず、本日の掃除はこれにて終了。

食器洗って、掃除して。1時間くらいになるかな?

でも、まだ朱里ちゃんが帰ってこない。

どこまで行っちゃったんだろう?

一緒に行けばよかったかな?



そんな気持ちも知らず、朱里ちゃんはなかなか帰ってこない。


ゴン太、10才っていったっけ?

コーギーと柴犬のミックスだって、昨日話してくれた。

愛嬌のある短い足で、いったいどこまで行ったんだ?

まったく……


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