わたしの魔法使い
自分から聞いといてそれかっ!

でも、さっきより優しい目になってるから一安心。


“しろいうさぎとくろいうさぎ”か。

好きだったな。何度も何度も読んで、絵本、ボロボロになっちゃったんだ。

あれが、私の原点なのかもしれない。




「朱里ちゃん。本屋、行こう?」

「…ヤダ…」

「君に拒否権はない!強制連行だ!!」


そう言って私の手を握る颯太さんの顔が笑ってる。

さっきまで怒ってたのに……。

怒ってたことなんて忘れたみたいに、楽しそうに笑ってる。


こっちはドキドキしてるんですけど!

初めてなんだもん。男の人と手を繋いだの……


颯太さんの手は温かくて、私の手を隠してしまうほど大きい。

綺麗な手だけど、やっぱり骨太な感じが男の人の手って感じ。


しばらくこのままでいたいな……



「顔、赤いよ。」

「あ、暑いから…?」

「照れてるでしょ!可愛いー」

「可愛くない!」


軽口を叩き合いながら、本屋へ向かう。



本当は行きたくない。

もうしばらく行ってないから。

でも、颯太さんとなら平気かもしれない。


やっと自分と……

作家として、書けない自分と、向き合うときが来たのかもしれない。



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