扉の向こう


そのあとはいつものように現役の人と戦っていて小島先輩と話すことはなかった。

しかし最後みんなで差し入れのお菓子を食べているときにそれは起こった。

「名前なんて言うの?」

小島先輩が私に話しかけてきたのだ。
真梨は向こうで他の人と話していた。
助けてもらいたくても無理だった。

「大槻唯花です‥」
「やっぱ大槻さんだ。俺のことみたことないかな?」

見たことなんてないはず。
高2の人なんて真奈姉さんしか関わりないし。

「ない、です」
「あっまじか。マンションの向かいの部屋に住んでんだよ」
「そうなんですか?」

言われてみれば向かいのおうちは小島さんだった気がする。

「そうだよー。まあ俺もそんなに唯花ちゃん?のこと見たことなかったし仕方ないか」
「すいません‥」
「気にしない気にしない!今度みかけたら声かけるし声かけてな!」

私にそう言い残して

「おつかれさまでーす」

と先に帰って行ってしまった。
同じマンションなら一緒に帰ってくれてもなあなんて思ったりしたけど。
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