アンダーサイカ


チロチロと舌が動き、それが少しずつ近づいてくる。


「!?」


「握手をしたいそうですよ。
アンダーサイカにようこそ、って。」


「こ、これ握るの…?」



運動会の綱引きに使う綱くらい太く長い、二股に割れた真っ赤な舌。

ざらざらしてそうで、できれば触りたくないのが本音。
…でも、


―――せっかく来てくれたんだし……。


私は意を決して、大蛇の舌先をそっと掴んだ。



―――あれ。

思ったほど嫌な感触じゃない。


大蛇の目を見る。
バスケットボールくらいの大きな紫色の目玉だ。私を見る目も、今はどこか柔らかく見える。


危険じゃないのかもしれない。



そう思った私は、


「…えへ…、よろしく。」


気が緩んで、ヘラッと笑顔を浮かべた。


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