アンダーサイカ


「豊花……っ!!」



困惑する状況の中で、潤ちゃんが私の傍に駆け寄ってきた。
らしくない焦った顔をして。

そんな潤ちゃんを見返す私も、理解できない状況に焦りを見せていると思う。



「…じ、潤ちゃん………。」

「豊花、行くよっ…!!」


端から見ていた潤ちゃんには、これがどれだけ異様な光景かがよく分かっていただろう。

二人の大人に明らかな敵意を向けられる小学生(わたし)。
そして突然静止した男の人。



潤ちゃんに手を引かれ、私たちは一旦この場所を離れた。



去り際、振り返って見た石化の男の人は…、

稔兄ちゃんに対して、本当に、憎しみを込めた瞳のままで…―――。



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