あの頃、テレフォンボックスで
その夜はほとんど眠れなかった。
眠れなかった、と自分では思っているけれど
夫が部屋に入ってきて
隣のベッドでいつ眠ったのかは知らない。

ベッドの中でまんじりと動かずにいて、
同じ問いかけと同じ答えを
自分の中で繰り返してたつもりだけど、

いつの間にか、眠っていたのだ。


・・・・こんなに辛くても、
ちゃんと寝てる。



少し気が楽になって
何も問いたださず、朝早く夫を送り出した。

ピアスの留め具は
キッチンの隅に置いたままだ。




「あなた・・・今度はいつ帰れるの?」


出かけに、いつもは聞かないことを言ったので
夫は少しとまどったように見えた。


「12月中には一度帰れる・・・と思う。
話もあるし。
ま、今度帰ってきたときに、詳しく話すから。」



私の心の端を引っ張ったまま
行ってしまった。



今日は、
よく晴れているのに
体が重くて動けない。
< 111 / 201 >

この作品をシェア

pagetop