わたしは女の子になる。

「そっかぁー。とりあえず君が映ってるページ全部見るー」

「えっと、あー修学旅行と、体育大会も映ってたかなぁー。リレーで決勝までいったんだけど、アンカーの奴がバトン落としちゃってねぇー」


なんて、彼が思い出を話すのを聞く。

いいなぁ、リレーで走ってるところ、見たかったなぁ。

絶対、かっこいい。

もし、同じ学校だったら、もっと、彼のかっこいいところをたくさん見れたのかな。

ときどき、ちょっと残念にも思ったりもするけど。

だけど、こうやって彼から学校の話を聞くのも楽しいし、他校じゃなかったら、もしかしたら、こんなに仲良くなれなかったかもしれないから、やっぱり、今の私たちが一番なんだって、いつもその結論に帰着する。


「じゃあ、俺も卒アルみせてもらおうかねぇ」


おじいちゃんみたいなしゃべり方で、彼が私が持ってきた私の学校の卒業アルバムに手を伸ばす。

もにゃもにゃ、って表現が多分正しい。
柔らかい布ごしに抱きしめられるような、そんな、あったかくてやさしい、彼の喋り方と声。

目を閉じて、ずっと聞いていたいくらい、すき。



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