わたしは女の子になる。

「なにこれ?」

「あ…それ、突発的に思いついて描いた漫画だわ」


屋上で、インテリの男の子と、その男の子が好きな女の子が、プラトンの話をするっていう、なんの意味もない話。

結局漫画として描くのが面倒になって、文章として完成させちゃったから、漫画自体は一ページ半くらいしかない。


「なんか、キミの好みが反映されててボクはにやにやしてしまうよ」


私の描いた中途半端なその漫画を読んだ後、彼がそう言った。


「…うぅ……」


そうですよ、私は、貴方みたいなインテリの男の子が大好きなんですよ。

恥ずかしくなって、テーブルに顔を伏せる。



またファイルをあさって、今度は落書きが描いてある紙を彼は見つけたらしい。


「…え、なにそ……」

「『欠乏症です。早くあいたいです。頑張ります』」

「あっ…!!!!」



彼が読み上げた紙に描いてあったセリフを聞いて、顔が熱くなる。

多分、それは、君にしばらく逢えてなかった時の落書き。


私の中の君が、足りなくて、足りなくて、しょうがなかった時。



「……足りなかったの、あの時は」


もう、まともに彼の顔を見れなくて、また顔を伏せた。


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