Debug

「美味しそう。すっごい良い匂い」
「いただきまーっす」

 陣君はにこにこしながら、食べ始めた。私も彼に続く。

「美味しい」
「だろ?」

 私達は美味しい料理に、舌鼓を打ちながら、食事の合間の会話を楽しむ。

「みあっちは彼氏とかいないの?」
「えっ、いないよ?」
「本当に?」
「嘘ついてどうするの」

 私は少しだけ寂しい気持ちになった。

「前ね、好きな人はいたんだ。いつも一緒にいてくれた人。だけど、嫌な目にあったんだ」
「そっか……。大丈夫だよ、きっと良い人が現れるから」

 陣君はそうやって励ましてくれた。


 良い人が現れる、か。
 それが、陣君だったら良いのに。


「陣君は?」
「ん?」

 食事も終わりに近付いた頃、私が口を開いた。

「陣君は、彼女は?」
「いるよ」

 その答えを聞いた瞬間、私の中で高まっていたものが、一気に凍りついた。
 だけど、なぜか私は、ああやっぱりなと納得してしまっていたんだ。

「へぇ、どれくらい付き合ってるの?」
「六年、かな」

 こんなに格好いい人に、彼女がいないがなかった。
 やっぱり、陣君は誰にでも優しいだけで、私はその他大勢の一人だったんだ。
< 25 / 96 >

この作品をシェア

pagetop