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「大体ね、あのとき、みあがどれだけ苦しんでたと思うの?」
ひゅかの、真剣なまなざしに、私達は黙った。
「あたしはずっとみあのこと見てきたんだからね。
あんたも辛かったかもしれないけど、そんなの自業自得じゃない。
みあの苦しみにも気づかないで、かといって決断するわけでもなく、優柔不断の塊だったじゃない。
それで、みあがいなくなったとたん、その大切さに気づいて、彼女とも別れて、みあはどこだって?
そんな都合の良い男に、みあは勿体無いの。
別れるくらいなら、最初から別れればよかったものを」
ひゅかの言葉に、陣が気まずそうな顔になる。
ちょっと、結婚式の前に、めでたい日なのに、こんな喧嘩みたいな会話は、心臓に悪い。
「だけどね」
ひゅかはふっと、表情を和らげた。
「五年も経っても、みあのことを想い続けて、みあのことを拾い上げた根性は、認めてあげる」
勝気な花嫁は続けた。
「ただし、またみあを泣かしたら、容赦しないんだから」
ひゅかの旦那様は、一生彼女の尻にしかれることになるんだろう。
だけど、それもまた、幸せなのかもしれない。
私は、この親友に、尊敬の意を示したい。
名前は変わっても、ひゅかは一生、私の良き親友であり続けるだろう。