Debug
たくさん寄り道をした。
無駄なラインをいっぱい作って、エラーを見つけて、デバッグをしようとした。
私の人生は、ちょっと辛くて、涙でいっぱいの思い出だけど、それは消さなくても良いかと思える。
人生はプログラミングのようで、そうじゃなくて、やり直しがきかない。
だけど、過去から学ぶことができるから、それで良いんじゃないかと思う。
人生のデバッグとは、間違いを見つけて、直すことじゃなくて、それを繰り返さないこと。
私は、自分の甘えから、エラーのループに迷い込んだけど、それから抜け出せたと思う。
陣と再会して、これからどうなるかは、まだわからない。
だけど、私はもう、デバッグの方法を覚えたから。
今までよりは、強くなれたんじゃないかな?
結婚式は着々と進み、恒例のブーケトスになった。
ブーケが欲しい女の子達に、小柄な私はもみくちゃにされそうになる。
それを、陣がそっと手を引いて、助けてくれた。
ひゅかが、ブーケを掲げ、背中を向けた。
「3」
ひゅかがカウントダウンを始める。
「2」
ブーケは誰のものになるのかな。
「1」
「えっ?」
他人事のように考えていた私の腰に、手が添えられた。
「それっ」
ひゅかの掛け声と共に、ふわっと身体が持ち上げられた。
「ええっ!?」
ひゅかの投げたブーケが、陣に抱えあげられた私の正面に――。