抵抗軍物語 ディスティニーズクロス

二、

現在、午後10時過ぎ…

その電話は、突然かかってきた。

燐塊町路地裏にある、とあるキャバクラ。
そこで酒に酔った客が、キャバ嬢にセクハラをし始めたので、何とかして欲しいという依頼が来たのだ。

(…その程度の問題なら、あたしじゃなくて警察呼べよ…)

そうは思いながらも拒否する理由はない。

余談であるが優奈の仕事における辞書の中に『断る』という文字はない。
貰う物はきちんと貰うが、それよりもまず困っている人は放っておけない。

それに…その程度なら簡単に解決できそうだ。

そんな様々な事を考えた後、優奈はその仕事を引き受けた。







道に並ぶ店の看板のネオンの光と騒音。

欲望に塗れた人々でごった返す路地裏を歩き、目的のセクハラ犯が出たという店へと向かう。
そして着いたのは『ROSE』という燐塊町ではNo.2の売上を誇るキャバクラ。

ちなみに売上No.1は美都の仕事先の『緋月憐華』という店。

そして優奈が店に入ってから少しした後…





「うわぁぁぁぁぁ!!!」

という叫びと共に、店の外に中年らしい小太りのサラリーマンが飛び出してきた。

そしてその後、ゆっくりと優奈も店から出てくる。
しかし、コツッ…コツッ…と少しずつ男に近寄るその革靴の音が、まるで恐怖の足音のように聞こえた。

「…オイ、クソジジィ…」

そう言いながら、優奈は男の胸ぐらを掴む。
その目は、さっき家にいた時とは別人のように違い、怒りに満ち、鬼のように釣り上がり、放たれる眼光は刃物のように鋭い物のように見える。
また、声のトーンもかなり低く、乱暴で荒々しい言葉を吐き捨てるかのように言う。
普段の優奈からは、到底考えられない光景だ。

優奈は胸ぐらを掴んだ男をキッと鋭く睨み付ける。

「ひぃ…!」

男が短い悲鳴を上げる。
いや、本当はもっと大きな悲鳴を上げたいのだが、恐怖の所為で全く声が出ないのだろう。
現に男の顔は青ざめ、変な脂汗を身体中に掻いている。

しかし優奈はそんな事構いもしないで、男に

「確かに…キャバクラはテメェらみてぇな客からすりゃぁ、いい所だろうよ。仕事で疲れて今やカミさんですら聞いてくれなくなった話を、可愛い女の子がニコニコ笑って聞いてくれて…おまけに酒もあるしなぁ…」

ここまではまだ優しい物言いだ。
つまり序の口。

…が、逆にそれが怖い。





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