抵抗軍物語 ディスティニーズクロス

出口までの移動中、彼女と優奈は隣に並び、夜の街を歩いていく…

「…あ、そういえば、自己紹介がまだだったよね。」

すると、優奈の左隣を歩いていた彼女が、右隣にいる優奈の顔を覗き込みながら、

「尸 舞(しかばね まい)。さっきは助けてくれてありがとう。」

そう名乗り、ニコッと優奈に微笑みかけた。
実に女の子らしい可愛い笑顔で。

「舞さんか…。あたしは…」

「神崎 優奈ちゃん…でしょ?」

優奈が自己紹介をする前に、彼女は優奈の名前を言う。

「えっ…」

「さっき男の人が大声で呼んでたじゃない。」

そりゃ…あんな狭い場所であんな大きな声で叫ばれたら…誰の耳にも入るだろう。
あの男、結構声デカかったし。


「あ、それと…敬語じゃなくてもいいよ。同い年なんだし。」

「そうですか?なら普通に…」

「うん。そうして。」

優奈が困惑しつつ会話をする間、彼女はずっとニコニコと笑いながら優奈を見ていた。
八重歯の覗く、少し幼い笑顔で…



優奈はこの『舞』と名乗る少女に何か違和感を覚えていた。

(なんかおかしいな…。この子…粘っこい。)

いつまでも絡まり、まといついてきて離さない…まるで蜘蛛の糸のような…。
そんなイメージが脳裏を過る。

深く入り込んでしまえば、上手く身動きが取れなくなる。
それこそ蜘蛛の巣に捕われた虫のように。
とにかく、余り関わりたくない。
そう思った。

無論、その事は優奈の中で秘密にしておく事にした。








それから二人は出口まで、様々な話をした。

「それにしても…『尸』ってさ、珍しい名字だよね。」

「よく言われる。まぁ…名前を書く時は楽だけどね。三画だし。」

「確かに。そう考えるとあたしの名前は…結構書くの面倒臭いんだよなぁ…。」

「そう?私は『神崎 優奈』って名前、素敵だと思うけどなぁ〜」

「どのへんが?」

「特に『優奈』って所かな?女の子らしいけど実は強い!みたいな優奈ちゃんのイメージにピッタリだもん。」

「女の子らしい…か。」

驚いた。

『女の子らしい』なんて言葉…、今まで優奈が最も自分から見て遠い存在だと思っていたのに、まさかそんな言葉を言ってくれる人がいるなんて…

それに、自分が意外にもちゃんと会話ができている事にもびっくりしていた。

(何だかんだ言っても…あたしは人と関わる事が嫌いじゃないかもしれないな。)

「どうしたの?急に黙って…」

「…ううん。ちょっと考え事。」

「ふーん。」






しばらくの間、沈黙。






「そういえば…」

と、今度は優奈の方から舞に話し掛ける。

「舞のお母さんって、何ていう所で働いてるんだ?」

「え?うーん…確か…緋月何とかっていう…」

「緋月憐華?」

「そんな名前。」

それは、美都が働いている店でもあった。




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