抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
その刹那。
ビュゥゥゥゥゥン…!
と、猛吹雪に似た凄まじい突風が吹き荒れる。
「くっ…!」
短い悲鳴に似た声を上げてから、優奈は目を腕で覆った。
そして数秒後、突風が止み辺りを見渡すと…
「…舞?」
おかしい…。
たった数秒でそんな遠くへ行ける筈がない。
けれども、そこには舞の姿はもう無かった。
ネオンの光と騒音と、人々の波でごった返す街の中…
先程、舞から感じた不快感が急に脳裏に蘇る。
途端、体が震えだした。
「…大丈夫。大丈夫だ。」
震える体を抱き締めて、諭すように自分に言い聞かせる。
昔からの優奈の癖だ。
だが、不思議な事にこうすると、自分でも驚愕する位心が落ち着くのだ。
すると効果が出たのか体の震えが止まった。
(どうしてあんな感じがしたんだろう。あの感じ…)
優奈は頭をブンブン振って、思考するのを止める。
「やめよう…。考えても分かる筈ない。」
そう自分に聞かせた後、優奈には少し大きな男物のコートを翻して優奈は再びネオン街の人の波の中へと消えていった。
優奈が舞にあのような第一印象を持ったのは、本人にしても不思議な筈だ。
なぜなら、あのような変な印象を持った相手とは…
大抵の場合『生きる』か『死ぬ』かの命を賭けた戦いをする事になるのだから。
後に血生臭い戦いをする事になる相手とは、最初から変な印象を覚える。
そしてその中でも『粘っこい』という印象を覚えた相手とは、未来で起こるであろう事が泥沼化するという事にも繋がる。
あくまで優奈が数年間この仕事をやってきた中での、経験上の話であるが。
燐塊町のネオン街の真上には、異様な程くっきりとした三日月が登っている。
現在、午前0時過ぎ。
子供は夢の中にいる時間帯だ。