抵抗軍物語 ディスティニーズクロス

しかし、彼が店に上がったとほぼ同時に、

「美都さん。シャンプーってもう無いんですか?」

優奈は脱衣場から身を乗り出し、胸から太ももまでの辺りをバスタオルで隠して玄関の方を見た。






「「「あっ……」」」






一瞬、時間が止まったかのような錯覚に陥る。

玄関にいた彼と、その後ろにいる美都、そして優奈の三人ほぼ同時に、短い声が上がった。
タイミングの悪さというものは、時としてこんな失態を起こす。
今回の場合、誰も悪くはない筈…なのだが。

そしてそれを最後に気まずい沈黙が走る。






……………………。






「美都さん、あたしのシャンプー知りませんか?見当たらないんですけど…」

沈黙を破ったのは優奈だった。

その顔は恥ずかしさで紅潮してい…る訳ではなく、まるで『何事も無かった』と言わんばかりの真顔だった。
その目には少し呆れの色さえもが見える。

流石にそのリアクションの薄さというか、反応には美都も彼も拍子抜けしてしまった。

というより彼に至っては、目の前で起きている事を理解しようにもしたくないようにも見える。
いや、理解に苦しんでいるだけなのだろう。
その顔は彼の髪のように真っ赤に紅潮しており、頭からはプシューと白い蒸気のような物が上がっていた。

「あ、ああ…えーっと…、そこの戸棚の所に、新しいの買ってあるんだけど…」

美都は優奈のその冷静沈着な態度に、戸惑いつつも応える。
空気を読んだ…のか?

「ああ、そうですか。ありがとうございました。あたしはもう少しお風呂に入ってますから、お客さんのお相手お願いしますね。」

ニコッ…と引きつった笑みを浮かべながら、再び脱衣場へと入っていく優奈。






…………………



…………………



…………………



…………………






「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

と叫んだのは、美都に連れられて店に入った彼の方だった。

「ちょ…落ち着い…」

「落ち着いてられっか!女の子の裸を!裸を…///」

言葉が途中で詰まり、その顔は更に紅潮し、頭からは先程同様蒸気がボフッ!という軽い爆発に近いような音を立てながら出る。
動揺の余り、もうどうしていいのか判っていないようだ。

「大丈夫だって。あの子も対して気にしてなさそうだったし…」

「それが逆に怖ぇんだよ!!!!『キャー』とか叫んでくれた方がまだマジだわ!!!」

美都にそう叫び終わった後、彼は地面に足元から崩れるように手をついて、

「ああ…俺は一体何て事を…」

「いや、犯罪犯した訳じゃないんだから。」

そんな美都のツッコミに近い慰めも、今の彼には聞こえていなかった。






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