抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
事後。
…そういうと少しおかしい響きになってしまうが、それからしばらく後、優奈は風呂から上がって、着替えてリビングへと向かった。
しかし、どういう訳かリビングの中央にあるソファーには美都の姿しかない。
「…あれ?さっきの子は…」
「…いるわよ。あそこに。」
優奈がバスタオルで髪を拭きながら尋ねると、美都はため息混じりに部屋の隅を指差した。
そこには、こちらに背を向け体育座りをし、小さくなっている彼の姿があった。
が、その後ろ姿は、まるで人生の終わりを感じている人間の物のように、(そんな人を今まで仕事の中で数多く見てきた優奈には)見えた。
更に今にもキノコが生えてきそうなくらい、じめっとした雰囲気を出している。今にも『ズ〜ン…』といった低い効果音が聞こえてきそうだ。
「なんか…負のオーラが見えるんですけど…」
「さっきからずっとあの調子よ。あの子も大変ね。あれでもウブで恋愛もまともにした事ないのに、いきなり女の子の裸見る事になるなんて。それに…まさか初対面でいきなりアンタに弱み握られる事になるなんてさ…」
『それに』から後の言葉を美都は少し声のトーンを低くし、強調するように言う。
嫌味の込められた言い方だ。
「そうですね。」
が、優奈は美都の話を大して気に止めず、サラッと聞き流す。
そして冷蔵庫から牛乳瓶を出して一気に飲み干す。
「…それにしても、美都さん随分彼について詳しいんですね。お知り合いですか?」
「あれ?言わなかったっけ?昨日話した私の知り合いで、アンタと同年代の子っての。それがあの子なんだけど…」
「え?それって今日の話だったんですか?」
「言ったでしょ?手を打つのなら早い方がいいって。」
それにしては早すぎだろ…と内心優奈は思った。
そしてある事に気付く。
「美都さん。もしかして、わざとあたしにお風呂入るように勧めたんじゃ…」
「さぁね〜?」
軽く受け流された。
が、きっとあの事は美都が確信犯だったに違いない。
道理で準備もいい筈だ。
優奈がそんな事を考えてる事など知る由もない美都は、部屋の隅で未だに小さくなり続ける彼の姿を見て、必死に笑いを堪え…
「ブッ!やっぱ無理!面白過ぎ!アハハハハハハ!!!」
…れなかったようだ。
飲みかけていたお茶を軽く吹き出して、そして大声で笑う。
あ、また掃除する箇所が増えた。
それに…
(…可哀想に。)
当の被害者である優奈本人は沙程気にしていない。
もう、どちらが被害者なのかよく分からなくなってしまった。