抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
二、
その日の夜。
重い灰色の雲に覆われ、月明かりの届かない燐塊町を照らすのは、ネオンの光のみ…
今宵もまた数々の欲望が渦巻くであろう。
その入り口ゲート前に佇む二つの影…
「…さて、行こうか。」
青く薄光る髪を夜風に靡せながら言うのは、町の何でも屋…優奈。
「…ああ、そうだな。」
もう一人…赤い髪を風に揺らし、鋭い黄色の眼光を放ち、そう少し籠もった声で炎真が答える。
「…疲れてる?」
炎真の声を聞き、そう思った。
「ああ…色々あってな…。」
半ば物言いたげな目で、半ば青ざめた顔をしながら炎真は答える。
(差し詰め…美都さんに何かしらされたって所かな?あの人…しばらく会ってない身内には、意味不明な事するからな…)
そう思った。
この推理は、案外事実と近い所をついていたりする。
「ふーん…。ま、ちゃんと着いてきてよね。甘く見てると命落とすから。」
それでも、そんな厳しい言葉を吐き捨てるように言ったのは、この『夜の無法地帯』の厳しさ故なのだろう。
その程度(と言っても決して小さな物ではないが)の事くらいは、炎真にも判っている。
「…判ってるって。」
それ以上は何も言わなかった。
そして二人はゲートを潜り、街の中へと進んでいった。
「そういえばさ、例の『破壊神』って人について、炎真は何か知ってるの?」
遊歩道の移動中、隣に並んで歩く炎真に優奈は話し掛ける。
「まぁ、一応知ってるっつったら知ってるけど…。あんま役に立たないと思うんだよなぁ…。」
頭をポリポリ掻きながら、呟くようにして言うと、
「役に立たない情報なんてない。…何でもいいから、知ってる事…教えて?」
前者は独り言のような小さな声で言い、その後炎真の方を向いて、優奈は尋ねた。
「…まぁ、いいけど…」
何を思ったのか、炎真はプイッと目を逸らして言った。
心無しか、炎真の横顔が少し照れているような気がした。
「で?炎真は何を知ってるの?」
「……。……異名の由来だよ。」
何やらそんな意味深な言葉を口にする炎真。
「……由来?」
「ああ。『破壊神』っつーのは、あくまでもソイツの特徴を表す…ま、あだ名みてぇな物だろ?名前っつーのはつける理由がある物だからさ…」
「…判った。で、一体どんな?」
『面倒な話は苦手なんだよ』
そう言わんばかりの表情で炎真を見ながら優奈は言う。
(コイツ…スゲー面倒臭そうにしてんな…。『何でも屋』として、それはどうなんだ?)
そう思いながらも、優奈の心情を察した炎真は、
「判った。じゃあ説明するぞ。」
自分も面倒な話は嫌いなので、用件だけさっさと伝える事にした。