抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
(けど…あんな事言われちゃあ…正直ヘコむわ…。)
悲しいような、虚しいような…、そんなよく判らない気持ちで沢山の心の中でそう思った。
「…さて、あたしもそろそろ仕事の準備しないと…」
そう呟いてからリビングに戻る。
そして部屋の隅にある、仕事関連の書類をまとめたりする為に使う勉強机の上に置かれた写真立てを手に取った。
その写真には、幼い頃の自分と、美都と、もう一人…男が微笑んでいる様子が映っている。
黒髪のボサボサの天然パーマで、色黒の男。
垂れ目で、いつもやる気の無さそうな雰囲気を出していた。
性格は美都によく似ていて、面倒臭がりでだらしなかったけど…。
優奈が大好きだった男。
彼は優奈の義理の父親で、優奈の命の恩人でもある。名前は神崎 光郎(みつる)。
美都の弟だ。
この『何でも屋 神無月』は、元々は光郎の店だった。
しかし…光郎は半年程前、仕事で突如勃発した乱闘を止めようとした時…
銃で撃たれて命を落としている。
優奈の目の前で。
おそらく美都が何でも屋の仕事を『こんな仕事』と軽蔑するのは、優奈に光郎と同じような道を辿ってほしくないからだろう。
これ以上…家族を失いたくない。
それに優奈はまだ子供で、性別も女だ。年頃の。
優奈は光郎の忘れ形見。
もし光郎の後に続いて逝くような事があれば…
その若い命が落とす所で無い所で落としてしまっては、美都的にもやるせないのだろう。
そんな思いから…。
でも優奈からすれば、命の恩人である光郎が始めたこの店を、閉めるような事は絶対にしたくない。
それに…、この仕事こそが自分の強過ぎる力を最大限に活用でき、町の人たちに恩返しができると、優奈は信じている。
相手にするのは悩みのある善良な一市民か敵だけで、依頼する者とされる者との関係だけ。
それ以上もそれ以下もない。
嫌いな人間との関わりを少しでも減らせるし、最初から敵と判っているのなら無駄な気を遣わなくてもいい。
何だかんだ言って、優奈にとってとても都合のいい仕事なのだ。
だから光郎亡き今もたった一人でこの店を切り盛りしている。
何とも複雑な関係だ。
しかし、そうはいうものの手伝い(だらけ)に来たり、先程みたいに優奈の今後の身を案じて様々な事を提案してくる時の美都の気持ちは、よく判らないが。
生前、光郎が何か美都に言ったのだろうか?と、優奈はたまにそう考え、一人ククッと笑っていた。
だが…今はとても笑えない。
「父さん…。あたし…このままでいいのか?」
優奈は写真を見つめながら擦れた声で呟く。
その瞳は…次目を閉じれば確実に頬を伝うと思われる程、涙が溜まっていた。