絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「あの、昨日も成瀬さんと話してたんですけど、城嶋さんって独身なんですか?」
「うん、独身。そんな話しないけど、昔からそんなことに興味なさそうな雰囲気はしてる」
「そうですよね……実に不思議です。そう、この前残業してて、どうして私を推薦してくれたんですかって聞いたら……えーと、いい人だと思った、みたいなことを言ってました」
「うんそうだよ、偵察に行って、この子なら仕事を組めると思ったって。しばらく前から言ってた。一旦人事に行く前から」
「え―!? そうなんですか?」
「うん、だけど、店舗の方が力を発揮できるんじゃないかって提案したら、もうしばらく考えてみるって感じになって。けど、そろそろ城嶋チームも人手が足りなくなってきたから、一人人数を増やそうって話になったら、やっぱり香月がいいっていうから。それで、まあ……」
「私の希望もとらず?」
「嫌だというのが見えてたよ(笑)。だから聞かない方がいいって言った」
「宮下代理が?」
「そう、俺が」
「酷い」
香月はそのまま目を閉じた。これだけ宮下と会話を交わすのは、実に何カ月ふりのことだろう。職場が一緒になったところで、挨拶や業務連絡以外に言葉を交わした覚えはなかった。
「……店舗の方が良かった?」
「今はあんまり思わないけど、最初はすごく嫌でした。成瀬さんがいなかったら絶対嫌だったと思う」
「うん、成瀬がいたから呼べたっていうのはある。城嶋さんも同期の成瀬を世話役につけたらいいって最初から提案してた。成瀬もそれでオーケーしてたし」
「えー……そんな大事だったんだ……」
「狭き門だからな、あそこは」
「あーあーもう、いやんなってきた」
「何が?」
「そんな……何が良かったんだろ」
「まあ、普通にちゃんとしてるところがよかったんだと思うよ」
「……」
納得いかないまま、もう一度深く目を閉じる。思い出す、佐伯がここへ初めて来た時「モデルルームみたい」と言った一言を。
「なあ、愛……」
「うん、独身。そんな話しないけど、昔からそんなことに興味なさそうな雰囲気はしてる」
「そうですよね……実に不思議です。そう、この前残業してて、どうして私を推薦してくれたんですかって聞いたら……えーと、いい人だと思った、みたいなことを言ってました」
「うんそうだよ、偵察に行って、この子なら仕事を組めると思ったって。しばらく前から言ってた。一旦人事に行く前から」
「え―!? そうなんですか?」
「うん、だけど、店舗の方が力を発揮できるんじゃないかって提案したら、もうしばらく考えてみるって感じになって。けど、そろそろ城嶋チームも人手が足りなくなってきたから、一人人数を増やそうって話になったら、やっぱり香月がいいっていうから。それで、まあ……」
「私の希望もとらず?」
「嫌だというのが見えてたよ(笑)。だから聞かない方がいいって言った」
「宮下代理が?」
「そう、俺が」
「酷い」
香月はそのまま目を閉じた。これだけ宮下と会話を交わすのは、実に何カ月ふりのことだろう。職場が一緒になったところで、挨拶や業務連絡以外に言葉を交わした覚えはなかった。
「……店舗の方が良かった?」
「今はあんまり思わないけど、最初はすごく嫌でした。成瀬さんがいなかったら絶対嫌だったと思う」
「うん、成瀬がいたから呼べたっていうのはある。城嶋さんも同期の成瀬を世話役につけたらいいって最初から提案してた。成瀬もそれでオーケーしてたし」
「えー……そんな大事だったんだ……」
「狭き門だからな、あそこは」
「あーあーもう、いやんなってきた」
「何が?」
「そんな……何が良かったんだろ」
「まあ、普通にちゃんとしてるところがよかったんだと思うよ」
「……」
納得いかないまま、もう一度深く目を閉じる。思い出す、佐伯がここへ初めて来た時「モデルルームみたい」と言った一言を。
「なあ、愛……」