境界線
「だって…人事部の加藤さんだって彼氏いるんですよ。あんな地味で可愛いげも何もないのに」
「こら。マキちゃん」
美人にはトゲがあるとはこのことだろう。マキは眉間にシワをよせ、信じられないと呟いた。
「女は結局中身だよ。私みたいな仕事人間、男が一番牽制するタイプだからね」
言いながら胸が痛んだ。
そうだ。デキル女は嫌われる。
男はちょっとドジな、守ってやりたいと思わせる女が好きなんだ。
「だからこんなヘルシー定食なんか食べて、外見に気を使っても無駄なのよ。とかいいつつ食べちゃうけどね」
まだ食べ終えていない、不服そうなマキを置いて席を立った。
「部長。私、やっぱり私部長みたいになりたいです」
「まだ言うのか」
「私彼氏と別れたんです」
マキはポケットからメモを出し、サラサラと携帯番号を書いた。
「飲みにつれてってください。そして教えてください」
「何を?」
「部長みたいな強い女になる方法を」
マキの熱い視線から逃れる術はなかった。私はメモを受け取り、胸ポケットにしまった。
私は、何でこう問題児ばかり抱え込むのだろうか。