境界線
予想以上に男っぽい部屋にあがり、ソファーに腰掛けた。
「気にしなくていいのに。年上の女に気なんか使えるほど、高橋はいい男なの?」
畳まれずに床に落ちたシャツをつまみ上げると高橋は慌ててそれを奪い、笑いながらカゴにつっこんだ。
「女性は洋服とかかばんとか化粧品とか、買わなきゃいけないものたくさんあるじゃないですか。タクシーになんか使わせちゃいけないんです」
これは口説き文句か何かなのか、と内心疑った。だが床の服を拾い集める高橋の顔はいつも通りで、私はもう何が何だかわからなくなっていた。
「下着、姉ちゃんが置いていった新品があります。あと服もあります」
そう言って高橋が引きずり出してきたカゴの中には女性ものの衣服が大量に放り込まれていた。
やはり姉にもこき使われているのか、と直感で思った。
「じゃあ遠慮なく借りるね」
「はい。どうぞどうぞ」