境界線

高橋からようやく余裕が消えはじめた頃、私は既に二度目の絶頂を待つ態勢だった。

「高橋さ…私がさっきイってたの気づいてた?」
「はい」

若いってすごい。高橋はまだ変わらないペースで動き続けている。私は疲労と快感からベッドにだらしなく体を投げ出している。

「高橋はいつイくの?」
「もうイった方がいいですか?」

なんて無粋なことを言うんだろう。

「部長、気持ちよさそうだから。もうちょっと我慢して攻めます」

目の前の裸男は本当に高橋なんだろうか。いつも通りの明るい、柔らかい口調と発言内容が余りにもアンバランスだ。

「はやくイって。明日も仕事よ」
「わかりました」

ここから先は覚えていない。

確か高橋が思いっきり突き上げてきて、私も有り得ないくらい声を出して。

翌朝はやっぱり体がだるくて、遅刻ぎりぎりで出社した。寝てる高橋を放置してきたため、高橋は大遅刻をしでかし、私のお叱りを受けにきた。

相変わらずへこへこと頭を下げ謝る高橋と、それを受ける私。二人の間には一本の境界線。


おかしいな。

まだあったのか。

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