紅梅サドン
雪子はどこに行くのだろうーー。

“遠く”とはどこなのだろう。


僕はビールを飲みながら、何も言わない雪子を見つめ、そんな事ばかりを考えていた。


「秋ジイ、前カノの真澄ちゃんもさ、イギリス人ときっと幸せになるよお。

秋ジイ、やっぱり悲しいの?

ピーピー鼻水垂らして泣いてもいいのよ、秋ジイ。」

ルノーがワインを一気に飲んで、またニヤニヤと僕の肩を掴んだ。

「お前はどこまでもデリカシーのかけらも無い男だな。

お前、ツラが非常に優秀で本当に良かったなあ。

ブサイクで一言多い男なんて、最悪だからなあ。」


「ああ、秋ジイみたいな?。」

「ーーなめんな。お前、殺すぞ。」


ルノーの継ぎ足したワインは、赤くユラユラと光る。


「ルノーさんは『爽やかに』デリカシーの無い事を言う所が憎めないんですよ。

ね、次郎君。」


雪子は次郎のオレンジジュースを継ぎ足して、そう笑っている。



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