紅梅サドン
「田辺君、明日の土曜日、施設に帰るから。兄ちゃんも自宅に帰るってーー。」

次郎がラムネ味のアイスを食べながら、僕に言った。

「ああ、明日な。わかってるよ。」

次郎は風呂上がりの濡れた髪を揺らしながら、僕の顔を覗き込んだ。

「寂しいんだろ?田辺君。やっぱりガキだなあ!!。」

次郎の食べるラムネアイスがポタリと落ちて、畳に小さな染みを作った。

「ガキにガキ呼ばわりされたくねえんだよ。ウンコ!!。」

「そのウンコって止めなよ。ーーなんか微妙だし。三十も過ぎて恥ずかしいよ」

「うるさいね。それ食ったら早く寝ろ。明日、お前ら昼には帰るんだろ?。」

「うん。兄ちゃんが風呂出たら寝るよ」

次郎とルノーは、明日この部屋を出て行く。


雪子は既に隣の部屋で寝ている。

雪子はあさって、日曜日の朝、ここを出て行く。


次郎はアイスの棒をゴミ箱に向かって思い切り投げた。

アイスの棒はゴミ箱の端にぶつかり、陽気な音を立て畳に転がった。


「下手くそ!。お前サッカー上手いくせにコントロールの悪いヤツだな。」


僕はそう言って笑った。



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