紅梅サドン
「秋さんが、前に
『俺の何が好きなの?』って私に聞いた事ありましたよね?


私、紅梅エターナルの村田お婆さんから実は、秋さんだけじゃなくて、何人もお見合い相手のプロフィール見せられたんです。

それでーー。

『長所』って書く欄がありますよね。

自分のセールスポイントを書く、みたいな。

他の方々は、丁寧に沢山書き込んでらっしゃったんですけど、秋さんの長所の欄だけはーー。


何にも書いて無かったから。

よく見ると、消しゴムで何度も消した後があるだけでね。


それ見た時に、可愛い方だなぁって。

一瞬で好きになっちゃったんです。

安易ですよね。


でも私の勘は間違って無かったです。

秋さんで良かった」

確かに僕は何度も書いては消して、面倒になって空欄のまま紅梅エターナルに提出した。


正直、プロフィールに自信を持って書き込んだ所で、実際会って幻滅されたら嫌だからーー。

相手に過度な期待を持たせたら悪い。


ただそれだけの、器の小さな理由だ。

『長所なんておこがましいーー』とか、そんな素敵な遠慮をした訳では、全く無い。


書くのが単に面倒だったのと、実際の情けない僕を知ったら嘘を付いた事になる気がした。


本当にただ、それだけの理由だった。




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