紅梅サドン
「ーー寂しいです。

雪子さんがいない、あの部屋はーー。

正直言うと、自分のこの気持ちに説明が付きません。

僕はこの歳にもなって、自分の気持ちがコントロールもできない子供なんです。

でもーー、

雪子さんが居ないとやっぱり何だか寂しいんですーー。」


僕はそう言い終わると下を向いた。


雪子の顔が見れないーー。

僕は雪子に一体何を伝えたかったんだろう。


僕は流れ落ちる汗をそのままで、ずっと下を向いていた。




「う~ん!!上手く行ったねえ。」

ルノーの声。


「雪ちゃん、女優だねえーー。

ドラマで『女はみな女優よ!』なんて台詞を聞いた事あったけどさ、本当だね』

これは次郎の声。


「秋さん、騙して本当にごめんなさい。

私、九州には行きません。

就職した建築会社は東京都内です。

その寮も都内です。

ルノーさんと次郎君が『そういう事にしなさい』って考えてくれた嘘なの。

本当に本当にごめんなさい!!!。」


これは雪子の声に違いないーー。


僕はゆっくりと顔を上げた。




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