ホモカレ
「え…?」
女のとち狂った発言に、男は唖然としていた
それもそのはず。この二人は出会いは一分前に遡る。
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今日は従姉妹の結婚式だった。
招待数は150人と大規模なもので一度も顔を合わせたこともない親戚やら、新婚夫婦の友人が会場に集まった。
中学三年生の斑鳩美幸も、花嫁側の従姉妹として、この結婚式に招待されていた。本来なら三年生は高校受験があって忙しいはずだが、美幸は推薦で一足先に高校に合格していたので、入試前のこの時期に結婚式に参加することができたのである。
普段履く機会がないハイヒールの靴を履いてめかし込んでいたが、その靴のせいで事件は起こった。
「すいません。お手洗いってどこにありますか?」
「此方の階段降りて、つきあたりの所に御座いますよ。」
会場のドアの前にたっていた従業員にトイレの場所を聞いてから、会場を抜け出し、階段に向かって歩き出す。
「まだ、披露宴始まらないよね」
リボンのついたハンドバックを片手に下げながら階段を慎重に一段一段降りていた美幸だが、バランスを崩して階段を踏み外してしまった。
刹那だが、自分の体が宙に舞っているのが分かる。
地面まで数メートルという短い距離なのに浮遊している自分を客観的に見つめるくらい長く感じた。勢いよく上半身から地面に向かって落ちていくので、美幸は目をギュッとつむった。
(落ちる…!)