大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
顔をマスクで覆われ、その涼しげな眼もとだけしか見えない木崎を前に由香里はしぶしぶ口を開く。

「……はい。」

直後、するりと男性にしては幾分細く骨ばったそれでいて美しい指が由香里の口の中に入ってくる。そしてそのままゆっくりと、中を撫でまわす。

「くちゅ…」

入ってきた指の違和感に由香里は思わず口を閉じてしまった。

「えっと…志水さん?」

「……っえ、あ…ごめんなさい。」

閉じてしまった由香里の口の中から無理やり引きぬくことも出来ずに木崎は困ったような、呆れたような視線を由香里に向けている。

由香里があわてて口を開くと、その指は一筋の唾液を伴ってゆっくりと引きぬかれた。

一瞬、みだらな感情が由香里の脳裏をかすめる。

「そんなに美味しかった?」

木崎は、唾液で濡れた手袋を脱ぎさると由香里に見せつけるようにそれをダストボックスへと放り込んだ。

真新しいゴム手袋を用意して素早く嵌める。

ピチっとゴムの弾ける音が響いた。

「今度は、口を閉じちゃだめだよ?終わったら幾らでもなめさせてあげるからね…。」
「すみません。」

自分のしでかしたあまりにも恥ずかしい行為に由香里は木崎の言葉の問題発言に気がつかない。

「あ、やっぱり舐めたかったんだ?」
「え?」

木崎は彼女が恥ずかしさにパニックになっているため、自分の発言に否定をしてこなかったことは、もちろん分かっているのだがあまりの可愛いしぐさについ笑いが込み上げてきてしまう。

由香里を見つめるその瞳が一瞬大きく見開かれたかと思うとすぐさま細められ、マスクの下からはクックッと低い笑い声漏れてきた。

由香里は何故笑われているのが分からず、彼に言われたことを思い返す。

『そんなに美味しかった?』

『終わったら幾らでもなめさせてあげるからね…。』

思い出してしまった木崎のあまりの発言に由香里の頭は真っ白になる。


「私は、そんな趣味じゃありません!!!!」


診察室に由香里の叫び声が響き渡った。


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