キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
それよりも、女王と交わしたジークフリートについての会話を、ラグナードは少し警戒していた。
あのあと、
「黒幕については、私も頭の中に入れておこう」
イルムガンドルはそう言って、
「その者のなりについてだが──」と、何気ない風でジークフリートを見た。
「背から翼が生えた人間とは、ずいぶんとめずらしいな」
「ああ、この者はローレンシア奥地に住む有翼人種で……」
ラグナードは、都でしたのと同じ苦しい説明を国王相手にくり返すハメになったのだが──
「そうか」
と言っただけで、イルムガンドルは不気味なほどあっさりと、あり得ないラグナードの話を信じた。
ただ、彼らが部屋を出る前に、
「ラグナード、ほかになにか私に言い忘れていることはないか」
と、彼女は再びジークフリートへと視線を向けて、厳しい口調で聞いてきたのだった。
「いえ、なにも」
平静を装ってそう答えて立ち去ってきたが──
女王が明らかに、ラグナードの説明を怪しんでいたのはまちがいない。
とはいえ、まさかパイロープを凍りつかせていた当のドラゴン本人が、人の姿で目の前にいたとまでは、考え及ばなかっただろう。
──と、
ラグナードはこのときそう思っていた。
黒い手紙にそう書かれてあったことを差し引いても、
なぜか会話の中でイルムガンドルはパイロープに異変をもたらした存在のことを口にするとき、ラグナードのように一般的な「ドラゴン」という呼称は用いず、
キリやジークフリート本人のように「天の人」とだけ呼んでいた──
そんなことは気にとめもしなかった。
「キリ、陛下の右目を見たか?」
薄暗い廊下を歩きながら、
ラグナードは少女の耳に口を寄せて、もう一つどうしても気になっていたことをそっとたずねた。
「右の目?」
キリがきょとんとする。
「それがどうかしたの?」
「陛下の場合は、瞳の中に俺と同じ印がある」
「え……?」
キリは、黒い印が刻まれたラグナードの顔を見上げた。
「陛下の印は何色に見えた?」
緊張した面持ちで、ラグナードは訊いた。
「赤い印だったか? それとも黒い印か……?」
あのあと、
「黒幕については、私も頭の中に入れておこう」
イルムガンドルはそう言って、
「その者のなりについてだが──」と、何気ない風でジークフリートを見た。
「背から翼が生えた人間とは、ずいぶんとめずらしいな」
「ああ、この者はローレンシア奥地に住む有翼人種で……」
ラグナードは、都でしたのと同じ苦しい説明を国王相手にくり返すハメになったのだが──
「そうか」
と言っただけで、イルムガンドルは不気味なほどあっさりと、あり得ないラグナードの話を信じた。
ただ、彼らが部屋を出る前に、
「ラグナード、ほかになにか私に言い忘れていることはないか」
と、彼女は再びジークフリートへと視線を向けて、厳しい口調で聞いてきたのだった。
「いえ、なにも」
平静を装ってそう答えて立ち去ってきたが──
女王が明らかに、ラグナードの説明を怪しんでいたのはまちがいない。
とはいえ、まさかパイロープを凍りつかせていた当のドラゴン本人が、人の姿で目の前にいたとまでは、考え及ばなかっただろう。
──と、
ラグナードはこのときそう思っていた。
黒い手紙にそう書かれてあったことを差し引いても、
なぜか会話の中でイルムガンドルはパイロープに異変をもたらした存在のことを口にするとき、ラグナードのように一般的な「ドラゴン」という呼称は用いず、
キリやジークフリート本人のように「天の人」とだけ呼んでいた──
そんなことは気にとめもしなかった。
「キリ、陛下の右目を見たか?」
薄暗い廊下を歩きながら、
ラグナードは少女の耳に口を寄せて、もう一つどうしても気になっていたことをそっとたずねた。
「右の目?」
キリがきょとんとする。
「それがどうかしたの?」
「陛下の場合は、瞳の中に俺と同じ印がある」
「え……?」
キリは、黒い印が刻まれたラグナードの顔を見上げた。
「陛下の印は何色に見えた?」
緊張した面持ちで、ラグナードは訊いた。
「赤い印だったか? それとも黒い印か……?」