始末屋 妖幻堂
「多分な。だがその前に、おまぃのその顔活かして、ちょいと廓を探ってもらう」

「遊女か。下っ端は美味くなさそうだの」

 ぺろり、と舌なめずりする牙呪丸は、その外見も相俟って、見る者をぞっとさせる。
 だが千之助はそうでもないようで、ふふ、と鼻を鳴らした。

「伯狸楼に上がってくれ」

 千之助の指示に、娘が顔を上げる。

「伯狸楼って・・・・・・。‘表’なんだろうね? ‘裏’は、ほんとにヤバいって話だよ?」

「遣り手なんだよなぁ・・・・・・。‘裏’・・・・・・になろうな」

「遣り手なんざ、店入るときに会えるじゃないか! ‘裏’まで行く必要ないだろ? 大体何で遣り手婆なんざに会いたがるのさ! 千さんてそういう趣味?」

 きゃんきゃんと娘が噛み付く。
 当の牙呪丸は相変わらずの無表情で、いつの間にか売り物のでかい鼈甲飴を舐めている。

「‘裏’に売られそうになった娘を預かってるんだ。足抜けさせるには、決定的な弱みを握らにゃならん。ちぃっとばかし危ない趣味のお遊びはともかく、獣相手は御法度だろ」
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