始末屋 妖幻堂
第十五章
「さて」

 洞窟内に降り立ち、炎の鳥を消してから、千之助は祠から持ってきた剣を、腰の袋に突っ込んだ。
 像自体が小さなものだったので、剣もそう大きなものではない。

 袋の口を縛っていると、いきなり人の気配を感じた。
 驚いて振り向くと、洞窟の入り口に、里が立っている。

「お、お里さん・・・・・・。どうしたんだ、こんなところで」

 前は冴もここに来たし、ヒトの足で来られないところではない。
 だがわざわざ来るようなところでないのも確かだ。

 今は雨も降っていない。
 やむを得ず、というわけでもあるまい。

 驚く千之助をじっと見つめ、里は一歩、洞窟に足を踏み入れた。

「・・・・・・あなた様こそ、何故このようなところに?」

 静かに言いながら、里はまた一歩、千之助に近づく。

「俺っちは、単にぶらぶらしてたら、つい奥のほうまで来ちまっただけさね。あんたは何ぞ、用事でもあんのかい。女子の足じゃ、キツかろうに」

 自然と、千之助は警戒を強める。

「わたくしは元々、この岩場におりましたもの。こんな場所、慣れたものですよ」

 薄く笑い、里は千之助のすぐ前に立った。
 そっと、彼の肩に手をかける。
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