始末屋 妖幻堂
「ここに来たのぁ、病の奴らだけじゃなかったはずだぜ。身体は健康でも、ちょいと長の家で働くにゃ不都合ってだけの奴もいたはずだ。そいつらはどうした? 働き口と称して、博徒に下げ渡したんじゃねぇのか」

 佐吉が勢い良く顔を上げた。
 『違う!』とでも叫びそうな勢いだったが、声は出ず、しばし千之助を凝視する。
 そして、再び視線を地面に落とした。

「・・・・・・あんたが俺を、どう思ってんのかは知らねぇがよ、確かに俺は、いい加減な野郎だったよ。でも、清の家から引き取った奴らに関しては、ほんとに俺は、ちゃんとしてやろうって思ってたんだ。下心って言われりゃそうだがな。だから、あんたの言う、人の家の細かな手伝いはできないけど、病じゃねぇ奴らは、麓で付き合いのあった奴に頼んで、町の口入れ屋に世話を頼んだ」

「その『町の口入れ屋』てのぁ、ちゃんとしたところなんか?」

 空を睨んだまま、千之助は早口に問う。
 そろそろ戻らねば、長らが起き出したら厄介だ。

「・・・・・・そこは・・・・・・実のところは、わからねぇ。俺の伝っていっても、知れてるだろ。口入れ屋はあくまで知り合いが話してくれただけで、俺は知らねぇんだ。けど、他に当てはない。そいつを信じる他なかったんだ。けど・・・・・・」

 悔しそうに、言いよどむ。
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