始末屋 妖幻堂
「あんたの想像通り、ヤバい奴だったのかもしれねぇ。ここにはよ、清がたまに、手伝いに来てくれてたんだ。長や冴にゃ内緒でよ。俺だって、伊達に裏街道を歩いてきたわけじゃねぇ。口入れ屋に連れて行ってくれるってぇ知り合いが、何となく胡散臭ぇってのに気づいたんだ。俺が人を出すのを渋るようになったら、いきなり態度が変わりやがった」

「・・・・・・ふむ。お前、今はどうなんだ? 奴らとは、切れてるのか?」

 言いながら、千之助は歩き出した。
 辺りは徐々に明るくなってきている。
 いい加減に帰らねば。

「切ろうと思っても、簡単に切れる相手じゃねぇ。当面は、身を隠すしかねぇや」

 背後で立ち上がりながら、佐吉が言う。
 千之助は、ひょいと振り返った。

「俺ぁ今日、この村を去る。何となく小菊のこともわかったしな」

 縋るような目を向ける佐吉に、千之助は、にやりと口角を上げた。

「・・・・・・お前さん、一緒に来るかい?」

『旦さん、いいんかい?』

 足元の狐姫が、思わず声を上げる。
 だがその狐姫の声に被る勢いで、佐吉は大きく頷いた。
 すでに千之助の後を追ってきている。

「まぁ待て。俺っちは一旦長の家に帰るが、お前を連れて行くわけにゃいかねぇ。そうさな、樫の大木で待っとけ」

「樫の大木かよ・・・・・・」

 佐吉の顔が曇る。
 何となく理由はわかったが、とにかくもう時間がない。
 そのまま千之助は、佐吉を置いて走り出した。
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