始末屋 妖幻堂
 千之助が頷くと、狐姫はそのまま、するりと中に入った。
 狐姫の姿は、今は見えない。
 中に何人いようと、関係ないのだ。

 ただ小太の縄を千切ることはできても、運び出すことはできない。
 狐姫一人で小太を救出することは、不可能なのだ。

 千之助は再び扉の前に戻り、取っ手に手をかけて待った。
 やがて、手に僅かな振動が感じられた。

 少しだけ、力を入れてみる。
 重い扉が、気づかないぐらい、ほんの少しだけ動いた。

「よし。上手く外したようだな。牙呪丸は一緒に来てくれ。呶々女は待ってな。俺らが入ったら、外から扉を閉めてくんな」

「えっ!」

 呶々女が驚いた顔で叫ぶ。
 しーっと口の前で指を立ててから、千之助は、ぽん、と呶々女の頭に手を置いた。

「野郎どもが、動く前に仕留められればいいがな。暴れられたら物音がする。あんまり派手に音立てちゃ、見世のほうまで響くだろ。そうなると厄介だ」

「・・・・・・わかった。ま、三人程度だったら大丈夫だよね。あたしはじゃあ、扉閉めたら台所に戻って、水や布を用意しておくよ。小僧、無傷とも思えないしね」

 大きく頷き、呶々女は請け負った。
 呶々女なら、自由に楼内を行き来できる。

「頼んだぜ」

 最後にぽん、と呶々女の頭を叩き、千之助は扉を引き開けた。
 暗い蔵の中に、光が射し込む。
 男が三人、こちらを振り向いた。
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