始末屋 妖幻堂
 素早く千之助は、蔵の壁に貼り付き、中の気配を窺う。
 人の気配はするが、妖気は感じられない。

 千之助は、そろっと蔵の扉に手をかけてみた。
 やはり、閂がかかっている。
 ざっと蔵を見上げると、屋根の近くにある小さな窓が目に入った。

「狐姫、あすこから入って、中から閂を開けておくれ」

『正面から入る気かい? 中の様子を確かめてからのほうが、良くないかい?』

 心配する狐姫に、呶々女も同調する。

「ここの用心棒って、まさに博徒だよ。堅気じゃないよ。花街の男衆なんかとは、比べものにならないよ」

 女どもの注進を受けて、千之助はもう一度、注意深く中の様子を窺ってみた。
 人の気配は、二人か、三人か・・・・・・。

「・・・・・・小せぇ蔵だ。小太は縛り上げられてるんだろうし、小僧一人に、そんな博徒が何人もつかねぇ。五人もいねぇだろうさ。それに、小菊が戻ったことで、小太のところに男どもが出向いたのなら、いい加減小太の命がやべぇ。殺しに来たのかもしれねぇしな。さっさと片ぁつけねぇと」

『まぁ・・・・・・そうだね』

 頷き、狐姫は千之助の肩を蹴ると、するするっと壁を伝って小窓に取り付いた。
 中を覗き込み、千之助を見て尾を三回振る。
 中にいる博徒は三人、ということだろう。
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