始末屋 妖幻堂
「好いた男に癒してもらうのが一番だぜ? お前さんは、俺っちを好いてるわけじゃあるめぇ。好きでもねぇ男に抱かれると思えば、同じことだぜ」

「だ、旦那様のことは・・・・・・お慕いしているわけではありませんが、嫌っているわけでもありません。旦那様が穢れを取ってくださるのなら、抱かれてもいいと思えるだけのお人ではあります」

 へ、と千之助は、かりかりと頭を掻いて薄く笑った。

「喜んでいいのかね。・・・・・・何で佐吉じゃ駄目なんだ? 生娘じゃねぇってだけで、お前さんを嫌うような野郎とも思えねぇけどな。てめぇは散々遊んでたんだしな」

 村の娘たちにも、手を出していた佐吉だ。
 ましてあのような山間の村、貞操観念など、ないも同然だ。
 夜這いが公然と行われていることでもわかろう。

 だが小菊は、ふるふると頭を振った。

「ただそれだけなら、そうかもしれません。でも・・・・・・ヤ、ヤクザ者に・・・・・・」

 う、と口を押さえ、小菊は布団に手をついた。
 やはりそこか、と千之助は小菊の背に手を当てながら考える。

 村での夜這いと、大勢のヤクザ者に無理矢理、というのとでは、事情がまるで違うのだ。
 時間をかけて傷を癒す、というのが最も望ましいといえばそうだが、早急に癒してしまいたい、という気持ちも、わからないでもない。

 今この話をしているだけで、嘔吐(えず)いてしまうようなら、傷が癒えるまでには相当かかろう。
 それまで根気よく、佐吉が付き合ってくれればいいが、散々待たせた挙げ句、やはり無理だ、ということもあるのだ。
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