始末屋 妖幻堂
 千之助は、じ、と狐姫を見つめた。
 全てを見透かすような瞳に、狐姫はいたたまれなくなる。

 顔を背けようとした瞬間、ぐいっと手を引かれた。
 油断していたので、狐姫は呆気なく千之助に倒れ込む。

 千之助は狐姫を、ぎゅうっと抱きしめた。
 そのまま、二人して床に倒れ込む。

「だ、旦さん・・・・・・」

 千之助に押し倒され、狐姫は驚きつつも辺りを見回した。
 襖は閉まっているが、隣の部屋には佐吉が寝ている。
 一応意識は戻ったのだし、あまり物音を立てれば気づかれよう。
 小菊だって、そろそろ起きる。

 ふと、狐姫の頭が冷めた。
 このまま千之助と戯れているところを、小菊に見せつけてやろうか。

 そんな意地の悪い考えが浮かぶ。

 が、狐姫の胸に顔を埋めていた千之助が、疲れたように身体を預けているのに気づき、狐姫は上体を起こした。
 千之助がずり落ちないよう、彼の頭を胸に抱きかかえる。
 すると、千之助が小さく笑った。

「・・・・・・ふふ。やっぱり、お前さんに勝る女子はいねぇな。俺っちには、お前さんだけだよ」

「旦さん?」

 先の狐姫の不安を見抜いたような言葉に、狐姫はただ、腕の中の千之助を見下ろした。
 千之助は、ちら、と狐姫を見上げ、ずるずると身体をずらすと、彼女の太股に頭を乗せた。
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