始末屋 妖幻堂
「お前さん、初物好きなんかい」

「なななな、何てこと言うんだよっ」

 途端に真っ赤になって、小太が大声を出す。
 慌てて千之助は、小太の口を押さえた。

「そ、そんなんじゃねぇよっ・・・・・・。ただ・・・・・・お、おいらは、そのぅ・・・・・・あ、遊び慣れてもないような奴は、遊女の相手なんか務まらないだろ。男の扱いに慣れた遊女からしたら、おいらなんか・・・・・・」

 もごもごと言う小太に、千之助は吹きだした。

「おいおい。お前、今のまんまで小菊の相手をしようとか思ってんのかい。ま、小菊もまだまだお子様だがな。そもそもお前さん、一体何歳のつもりだよ。お前の歳で女に慣れてるほうが気色悪いぜ。お前ぐらいの頃は、まだまだ青いほうが、女からしても可愛いもんさ」

 面白くないだろうけどな、と言いながら、千之助は小太の肩を抱いて歩く。

「お前は良い奴だ。年頃になれば、その辺の町娘だって、お前に惚れるだろうよ。何もわざわざ色町に行くこともねぇ。興味があるなら、三、四年後辺りに、俺っちが連れて行ってやるよ」

「・・・・・・いいんかよ。太夫が怒るぜ」

「それもそうだな。まぁ廓は女を買うだけが楽しみじゃねぇ。粋な客は、幇間との話を楽しんだりするものさ。お前さんがお楽しみの間、俺っちは幇間と遊んでおこうかね」

 へら、と笑いながら、千之助は小太と、月明かりの都大路を歩いていった。
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